大解説!「新 仮面ライダーSPIRITS」(4)

全7回を予定しているこのシリーズも今回で4回目、折り返し地点にかかりました。
前半部は「1号ライダー哀闘編」という事で本郷猛にスポットを当てた話をメインとしてきましたが、今回からは他のキャラにスポットをあてて行きます。
解説の方も後半の「2号ライダー誕生編」に関しての事が多くなってます…が、残念ながら現在発売されている単行本一巻には途中までしか掲載されていないため、クライマックスの部分についてはあまり触れないようにしてきますので、ネタバレを気にする方々もご安心を。
実際1巻でも十分燃える展開で終わってて啓蒙活動は十分できるのでよし!
つーかようやく半分なのかみよ。


第4号・狂気の大幹部 死神博士

ショッカー幹部の中でもギャグ色の強さで人気の高い地獄大使と並んで「怪奇」面で存在感の強い大幹部・死神博士。
TV本編では初期のショッカー日本支部には作戦指揮官としての怪人は幾度か登場するものの、支部組織を掌握するような指揮官は存在しないのだが…

第1号の時系列図で解説したように、「新 SPIRITS」ではTV本編4話に相当する時点で死神博士がショッカー日本支部に登場しているのである。

ショッカーに複数の作戦にまたがって指揮をする 「指揮官」が登場するのはゾル大佐が初めてであり(26話~39話)、死神博士(40話~52話、61話、68話)、地獄大使(53話~79話)と続く。
死神博士は幹部の中でも2番目に登場するにも関わらずゾル大佐よりも先に日本支部に登場している事に違和感を感じた読者もいたのではないだろうか。

また本編第4話の時点で死神博士が語る「私が立案した偉大なる計画」…本郷ライダーが「私の生み出した第一の男」であるというセリフから「仮面ライダー」タイプの改造人間計画立案者が死神博士である事が伺えるのだが、むろんこの部分は「SPIRITS」の創作部分でありその登場と共に賛否が分かれる部分である。

※注・「SPIRITS]の世界観では「ライダーマンを除く全ての仮面ライダー」はBADAN首領の「器」であるZXを作るための試作体であるとされており、死神博士の立案した偉大なる計画とはこの事であろうと推察されるのだが…これは我輩的には異論がある。
V3は瀕死の風見志郎を救うために1号・2号が即興で改造、Xライダーは神敬太郎博士によって手術された深海開発用改造人間カイゾーグ、アマゾンはバゴー老人が古代インカの技術で手術した改造人間であり、その全てにBADANの思惑が関わっていたとするのは強引さを感じる。

が、この大解説の主旨はSPIRITSを可能な限り拡大解釈して面白く読む事が目的である。
まず改めてTV本編での死神博士の変遷を確認してみよう。

死神博士は当初ヨーロッパを本拠地として活躍し、ライダーに倒されたゾル大佐の後を継いで日本支部の指揮官に就任している。
「新 SPIRITS」上でも死神博士の本拠地はこの時点ではヨーロッパと語られており、日本支部にいる理由は何なのだろうか。
前述の「偉大なる計画」のために日本に渡ってきたという解釈もできるのだが、「仮面ライダー」を開発する事自体はヨーロッパでも不可能な事ではないだろう。
開発経験者として言わせてもらうなら、重要なミッションであればむしろ出向先で行うよりも本拠地で行った方がより確実にスムーズに行えるはずなのだ。

以下は渡志郎個人としての見解。
ショッカーが長きに渡って社会の影に潜伏していたであろう時期に比べて、実力行使の象徴といえる怪人はこの時点でまだ4体しか存在していない。
つまりこの日本支部はまだショッカーの組織としては構築段階だったと想像でき、死神博士はその基礎を固めるオブザーバーとしての任務を受けていたと考えられるのである。

もう一つ考えられる理由としては改造素体としてふさわしい知力・体力を持つ人間がヨーロッパにいなかった(または改造手術に適応できなかった)ため、死神博士自身が素体選びを行うために日本へ渡ってきたという事。


言うまでもなく本郷猛は知力・体力共に兼ね備えた点で世界レベルの超人であるし、一文字を仮面ライダーへの素体として目を付けたのも死神博士であったし、同基地内で「仮面ライダー」タイプの改造人間のトライアルを行ってもいたようである。

また逆説的ではあるが、話作りの面白さという点で死神博士を登場させた、というのがわかりやすい考えかもしれない。
本郷猛は一文字編の間「ショッカーと戦うためルリ子と共にヨーロッパに渡った」事になっているが、そこはまさに死神博士の根城なのである。

本郷と死神博士の因縁はTV本編でも見受けられ、第一に死神博士の登場に伴い一時退場していた本郷猛が番組に復帰している。(TV本編40話「怪人スノーマン対二人ライダー」より)
また帰国の理由として強敵・死神博士を追ってヨーロッパから一時戻ってきた事になっているし、死神博士が日本から撤退するまで強敵死神軍団に苦戦するライダー2号を助けるために本郷は度々日本に帰国しているのである。

これほどまでに本郷が執拗に死神博士を追う理由として、「新 SPIRITS」では死神博士を登場させたのではないだろうか。

そして「新 SPIRITS]では本郷と死神博士はこの時すでにTV画面を通して顔を合わせている。
「自分自身を改造人間にした元凶」としても、本郷にとって逃がすわけにはいけない敵だったのかもしれない。

これは「新 SPIRITS」とは直接関係はないが、死神博士にまつわる仮説に「通称「桜島1号」の本郷を「新1号」に強化改造したのは死神博士だった」と言うものがある。本郷が新1号になった変遷についてはTV本編はもちろん「SPIRTS」上でも未だ語られてはいないため仮説の域を出ないのではあるが、我輩はこの説を有力と考える。

「本郷は死神博士にわざと捕らえられ洗脳された後に「対二号ライダー」として強化改造を受け新1号の姿になった。だが本郷自身は自己催眠によって洗脳から逃れており再びショッカーから脱出した。死神博士が理由も前振りもなく日本指揮官の座を地獄大使へと交代したのは、この時の責任から左遷されてしまったためである。

仮説とは言え、TV本編での新1号編OPの最後で、新衣装で手術台に縛られている本郷の姿が映像化されており再手術を想像させるには十分な説得力がある。
またこれまでの「新 SPIRITS」設定を是と考えるなら、「改造人間・仮面ライダー」を知り尽くした死神博士だからこそ新一号への改造が可能だったという事も言えるだろう。

そして…死神博士=イカデビルが最後の相手として選び死闘を演じたのも本郷猛=新1号ライダーなのである。

以上の事からTV本編の本郷猛と「改造人間・仮面ライダー」と死神博士の因縁は浅からぬ物があり、死神博士をTV本編第4話の段階で登場させたのは非常にアクロバティックながら本編のストーリーを生かした好展開と言える。

死神博士は我輩も大好きなショッカー幹部だったから(というか故・天本英世氏の大ファンであるので)「新 SPIRITS」の展開は結構うれしい。昔山手線の中で本人を見た時は夢かと思ったよ。
しろうはサインをもらいに行かなかったのですか?
いや、我輩も一応常識をわきまえていたからね、うん。ファンとして。
いやー、言い出す勇気のないチキンなだけだったと思うみよ。

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