さて、そろそろネタバレにもならないと思うのでいよいよ語ろうと思う。「劇場版 電人ザボーガー」の事について!
ネタバレどころかもう上映終了してるとこ多いみよ。
いやその原稿がね…まあまだ間に合うはずなので。うん。
さて、この映画はうちのマスコット3人組も一緒に見に行ってきました。みなそれぞれに別の観点でこの映画を見ております。
昭和特撮大好き、じきるです~
面白けりゃなんでもいい、くるみだみ。
映画って初めて見るです、らいなです!
…という脳内設定でのレポという事です。
脳内とか言うな!ちゃんと今回は意味があるの!
ちなみに我輩もう3回見に行ってるので、結構穿った見方になっているかもしれません。
ネタバレ覚悟でこのレポを見た後でザボーガーを初めて見る、という方は頭を空っぽにして見てください。
あと、ダラダラ長いのでご注意を!
あ、もちろん初回の舞台挨拶の時には例の大門ヘルメットを被って行きました。
この舞台挨拶そのもののレポは今更書いてもアレなんで省略しますが、メッチャクチャ盛り上がったんですよ。
うん…舞台挨拶は…ね…
ザボーガーのお面とか客全員にくばったり、やたら金かけて盛り上げてたみよね。
1.昭和版を再現した燃えるOP
OP前のアバンで国会議事堂に出現するミスボーグと秘密結社Σ。サイボーグ「ヨロイデス」に襲われる議員と警官達。
追い詰められた若杉議員の前に颯爽と現れたバイクに乗った青年、大門豊!
彼の「電人ザボーガー GO!」の掛け声と共にバイクはロボットに変形し、OPの歌に合わせてヨロイデスに次々と必殺武器を浴びせ、速射破壊銃で撃破する!
この場面はまさに昭和版OPや第一話の対アリザイラ戦をオマージュしたかのような場面でありほぼ全てのザボーガーファンは感涙したと思われます。
あたしもこの時にはすごい盛り上がってたよ…ここまではいいのここまでは。
なんだかじきるおねーちゃんは気がすすまなそうですね?
2.話の構成と簡単なあらすじ
この後、大門の回想シーンで父・大門博士の思い出のシーンが再現されるのだけど…
この辺で旧作ファンというか、シリアス特撮ファンはあれれ?となる展開が出てきます。というかあたしはポカーンとなったよ。
大門博士が殺されるとこなんて下らなくて笑っちゃったみよ。
そういうとこじゃないのに!そういうとこじゃないのに!
でもザボーガーと新アリザイラやブル・ガンダーとの戦いとか燃えただろ?
じゃあザボーガーがムエタイ拳法とかやるとかどうなのよ。
あー、うん。まあそれはビックリした。確かに。
そして大門豊の「秘密刑事」という役職が恐らく初めて「国家機関」的な描写をされるのだけど、ここに「近代日本社会の理不尽さ」という物が描写されます。
次々とΣに狙われる国会議員・若杉は時期総理大臣と目されながら人間的には最低の汚職議員として描写されます。
汚職の現場まで目撃しながら、そんな人物にアゴでこき使われ守らなければならないという矛盾に「正義の味方・大門豊」は「社会秩序」と「正義と悪」の狭間で悩み苦しむのです。
自分の正義に自信を持てなくなった大門はミスボーグに自分と同じ孤独を感じ、互いに心惹かれます。
で、やがて二人は身体を重ね…っていうとこで「すごい」描写があるんだけどさすがにこの辺は我輩でもこめかみが引きつりました。
引きつるどころの騒ぎじゃないよ。あたしなんて怒りの電流がほとばしりそうだったよ!
んな事言ったって志郎、濃厚なキスシーンとかセックルシーンとか映画でそのまんまできるわけないだろみ。
せっくるしーん?
まあこういう子供も見に来るんだからちょっと変に見えるくらいの印象でよかったんだろう。「一応」第二部の重要なファクターにもなってるんだから。
で、このあたりからザボーガーには人格があるような描写がされます。
なぜならザボーガーには死んだ大門の弟のDNAがダイモニウムの力で機械化され組み込まれているのです。
ちなみに昭和版ではザボーガーやメカアニマルのエネルギー源的な描写をされていた「ダイモニウム」が、この映画では「人間のDNAを機械に変換する働きがある」とされています。
(まあぶっちゃけると同名設定でもほぼ劇場版では別物の物が出てきたりするのですが)
その後自らの葛藤から「正義よりもミスボーグを守る」事を優先した大門はザボーガーに「警官を倒せ」と命令してしまうのですが、ザボーガーはそれを実行せず大門の頬を引っぱたきます。
しまいには大門を無視してミスボーグを倒そうとするザボーガーですが、大門との連携がないままではうまく戦えずミスボーグと共に爆発してしまい…若き大門豊は若さゆえの迷いから全てを失ってしまうのです。
この辺、内容はシリアスなのに絵面的にはちょっと…アレでした。
ん~ミス・ラガーズの格好とかエロくてよかったんじゃないかみ。
だからあたしはそーいうのが気に入らない。
そんな事言ったってホントにタダのアメラグコスの男達が出てきたってただ間抜けなだけだろ?
それならいっそホラ、まあ万人に受けるためにはね、必要なのよお色気も。悲しいけどこれ商売なのよね。
ぶっちゃけて言うな!ホントに悲しくなるから!
3.特撮から人生を学ぶ男!
で、第二部が始まって早々…秘密刑事をクビになり総理大臣の運転手をもクビにされ全てを失った中年・大門豊の物語が始まるわけです。
この第二部はもうほぼ過去編の面影のない物語。
かろうじて「秋月玄」はマシンブラックホークに乗って戦ったり「ジャンボメカ」は登場するものの…このあたりは初見ゴロシというか、とにかく映画で見てくださいw
さて、第二部の中年大門編についてですが。
先ほども言いましたが第二部の大門は全てを失ってます。
父を失い、弟であるザボーガーを失い、秘密刑事の職を失い、初恋の人(?)を失い、正義の信念を失い、一方で人として最低な若杉議員は総理大臣として君臨し秘密結社Σと手を組んだりもしてるわけです。
ある意味今の日本の社会の理不尽を徹底的に皮肉ってますよね。
で、旧版ザボーガーを見てた人ってのはほぼ漏れなく中年層です。そりゃもう舞台挨拶で板尾さんが「こんなに加齢臭の強い舞台挨拶は初めてだ」というくらい。
その人たちは今どうやって生きてるだろう。満ち足りて生きているのだろうか?欺瞞と偽善と理不尽と建前と金銭にまみれた「社会」に不満を抱きながらも自分なりに必死に生きてる人も多いんじゃないだろうか。
それこそ大門ほど酷くはなくても、大門に共感する人っているんじゃないかと思います。というか我輩はしました。
ザボーガーの「本編」はそんな風に正義の味方としての自分を社会に踏みにじられた大門豊が、それでも再び立ち上がろうとする話なのです。
どんなにカッコ悪くても例え誰に認められなくても自分の信じた正義を信じる大門豊を、我輩は素直にカッコイイと思いました。
そして強化改造したストロングザボーガーを駆りジャンボメカに向かっていく大門!ここで「子門真人の電人ザボーガー」がかかる!ブラックホークに跨り決着を迫る秋月玄!
ちゃんと熱い部分はしっかり熱いのだ!
まあちと安っぽい話ではあったけどみ。
自己投影厨乙。
いいじゃないか。自己投影だろうと何だろうと感情移入して自分自身の力になれば!
我輩は同時期に「初めての個人誌」の原稿を描いてたけど、これのおかげで本当に最後の最後まで手を加える事ができたんだよ。
ヘタかもしれないけど、自分自身に後ろめたさや後悔のない誰に見せても胸を張る事ができる本ができた。
それはザボーガーを見て自分のテンションを上げられたおかげだとマジで思う。
いや真顔でそんな痛い事言われるとこっちの方が恥ずかしいみよ。
そんなこんなで死闘の末ジャンボメカと悪ノ宮博士を倒したザボーガーと大門。
ジャンボメカに取り込まれていた「大門とミスボーグの娘(!)」アキコも母の愛の奇跡でサイボーグ体から人間になり、双子の兄にして大門の息子・秋月玄(!!)もわだかまりを捨てアキコと共に旅に出る。
二人に別れを告げ去っていく大門とザボーガー。その目にはもう迷いはなく信じる正義を見つめている。
死んでいった新田(元)刑事らの事は触れられなかったね…
その辺は尺の問題という事で…さらに衝撃のラストシーン!
そしてザボーガーのエンディングと共に、昭和版ザボーガーの映像が流れる。
大門、ザボーガー、飛竜三段蹴り、アリザイラ、ブルガンダー、ジャンボメカ、ラガーズ3兄弟、秋月玄とサンダーパンチ、魔神三つ首など…散りばめられたネタの種明かし。
井口版ザボーガーとの差異に「げぇぇぇーっ!」となるのもあるが、少しでもネタを盛り込もうと工夫したのだなあと思えるよ、我輩は。
まあ、それに…井口監督作品じゃないけど「魁!クロマティ高校」の映画とか見た後だともう何でもアリだと思った。うん。
あー、途中から宇宙猿人ゴリが出てくるんだっけ。
あれはメチャクチャだったなあ。
つまりそれもピープロの味というわけで。
…素直に納得したくないけど、まあわかる気はする…
でもジャンボメカにしたってさ…ザボーガーってのはね…ザボーガーってのはね…
くるみは中野刑事がロケットで飛んでいくのとか面白かったみよ?バカくさくて。
ストロングザボーガーもカッコよかったです。
…と言う感じで、まあ様々な感想がTitterなどに飛び交っていたわけです。
正直我輩も初回を見た後は感想に迷ったのですが…
4・井口監督の描きたかった世界とは?
ポスターなどにもよく言われてたりするように「中年になった大門豊」の物語です。
まずこの時点で劇ザボは「単なる昭和版のリメイク」ではないと言えるわけで。
そ…そうだけど…だったらそれはそれで中年版の熱い男のドラマを作ればいいじゃん!
でもさ、そんな「昭和のヒーロー像」をなぞった、それ「だけ」で映画作っていいなら多分我輩だって作れるよ?
そりゃ言い過ぎじゃないかみ。
これはあくまで我輩の観点からなんだけど、多分監督は「電人ザボーガー」が大好きであるけど、そのまんまを作ろうとは思わなかったんだろうね。
もちろんハードなヒーロー物語とかそういうのを見たい気持ちは我輩にもある。でも、この映画で「井口監督が作りたかった物」はそんなレプリカじゃなかったんだろう。
「ザボーガーを『素材の一つ』として、涙あり笑いありのマンガ的な活劇を描きたかったと思うのよね。
宝島別冊「電人ザボーガー」のムックでの監督インタビューを見ると、その思いがふつふつと伝わってきます。
(このあたり、うろ覚えで書いてしまったのでちょっと修正しました。)
つーかさ、前に唐沢なをき先生が試写会を見た時この作品をベタ褒めだったじゃない?
だからシロウは反対意見が言いにくいんじゃないの?
そういう可能性がない、という程我輩自分の意見に自信はないのだが。
自信ないのかみよ!
ただね、唐沢なをき先生の漫画とかも原作をギャグタッチにした「唐沢なをきワールド」を作ってるわけじゃない。
電脳なをさんの「まんが道」ネタとか「ロボット刑事」ネタとか、あと「ウルトラファイト」のコミックとか。
そのノリでザボーガーを「井口作品ワールド」と思って理解して見るとコレが不思議に旨かった。
それは…パロディとしての看板上げてるから許される事じゃないのかなあ。
そこは難しいとこではあるよね。
監督は「元の作品イメージを自由にする権利があるかわりに、責任も負う」というのは我輩の持論なんだけど。
だけど何だかんだ言っても、「熱血特撮ヒーロー」として押さえるところは押さえてるとは思うのですよ。
「誰でもヒーローになれる!」この言葉が劇場版ザボーガーのテーマの一つなのだから。
5.個人的総評
結論として我輩もやはり最初面食らったし辛口の意見もちらほら出ていたものの、井口ザボーガーは「よく出来た娯楽作品」だと思いました。
なぜだろうと思いながら映画を2度3度見てるうちに既視感を憶えたんだけど、やがて少年ジャンプの「サイボーグじいちゃんG」を見てた時と同じ気持ちだと気づいたのです。
「サイボーグじいちゃん」てなんです?
もうちょっと若い人にわかりやすく説明しろみ。
あー…えーと…まあ…昔「デス・ノート」や「バクマン。」の絵を描く人がそんな熱血ギャグマンガ描いててね。共通する部分としては…
・基本は熱血ヒーロー物である。
・そこかしこにギャグが散りばめられている。
・お色気も…ある(ヤングバージョンばーちゃんとかだが)
・科学的な部分はノリで理解すべきである。
・それでいて本人達は大真面目である。
・決めるべき所はカッコよく決める。
こんな所が、こう…今のザボーガーから感じ取れたわけです。
まああたしもサイボーグGちゃん好きだけどさ…何も…ザボーガーで…
じきるのように「昔のザボーガーを今の技術でリメイクした物が見たい」という人には、あるいは受け入れられないかもしれない。
でも一つの「作品」として見たら…こういう作品を作りたい、というビジョンが見えたので我輩的には「アリ」。
仮に旧ファンだけを対象に作っても受け入れられるのは本当に旧ファンだけな気がする。それでは「作品」としては成り立っても…「映画」としては成り立たなかったんじゃなかろうか。
ま、ギャグやお色気のとこは監督のいつもの作風って言われてるけどみ。
だからまあ、そこを受け入れられるかが評価の分かれ目とは思います。
一応言っとくと我輩「ライオン丸G」とか見てて拒絶反応起こしちゃった人ですので。正直今回の採点はかなり甘いとは思いますが。
でも初日の上映後の、見てた人たち文字通り「老若男女」の感想を聞いてたらね、みな「面白かった」「主題歌よかった」「ザボーガーカッコ良かった」と言っていたのを見た時、「これで良かったんだ」と思った。
「ピープロ」作品に共通する「ちょっとお間抜けでチープだけど中身はマジメ」なテイストはしっかり生かされてるし、「井口監督の作りたい物」という意味では全くぶれてないんだろうと思います。
「何がやりたかったのかわからない」「途中であきらかに投げてる」映画の多い中、我輩には本当に好きになれた作品でした。
ん?好きに「なれた」って事は…
皆まで言うな。だから総評であって、我輩だってもにょる部分がなくはないのだ。
やっぱりあんのかみそういうの。
だいなしですよ…